中国で生まれた世界市民として、過去20年の経営生涯において、私は中国から日本、日本からアメリカに渡り、そしてアメリカからアジア、アジアから中国への帰還を経験しました。そしてその中で、多種多様な価値観と企業文化の衝突を自ら経験し、その中で「開かれた対話」を通じた相互理解と相互学習の重要性を深く実感しました。
今日、21世紀はアジアの世紀だと言われていますが、アジアの核心となる中国と日本には、相互の理解不足と信頼の危機が存在しています。もし根本的にこの不信を解消しようとするならば、互いの文化形成の基礎となっている思想と価値観に注目すべきであり、また率直に誠意を持って、開かれた対話によって同じアジア国家として共同の価値観を探求しなくてはなりません。
経営学第一人者であるピーター・ドラッカーは90年代において既に、近代日本成功の最も重要な要素は「ソーシャル・イノベーション」であり、これは柔道の精神により「和魂洋才」の思想が生まれたからであると指摘しています。私はさらに日本のソーシャル・イノベーションの源泉は東アジア文化に根ざした「共生」の価値観だと考えます。それは正に松下幸之助が創業初期に提唱した「企業は社会の公器である」の有名な言葉に凝縮されます。
200年の動乱を経て、開放後30年の中国は、現在21世紀をリードする新商業文明を探索していますが、私はグローバル化の今日において、新文明は中国の力だけで誕生することは無理であり、他国との十分な交流と対話の中で創られると確信しています。例えば、価値観の違いによって、中国が今目指している「調和社会」の文明は「多様性」を重んじるアメリカの移民社会では現実的ではないと誤解されています。
そのため、我々の微力をもって、日中企業家同士の開放且つ寛容な心持ちでの開かれた対話を促進したく、それにより、真の21世紀世界レベルの持続的発展をリードする新文明を創出できることを祈っております。 |