日中・アジア経営者フォーラム(CJCF)
「日中の枠超えたアジア発グローバル企業を創出する」
尹銘深(Charles Yin, チャールズ・イン)・環球都市集団(WCH)董事長
 日本、中国とアジアの大企業トップ経営者らが集まる「日中・アジア経営者フォーラム」(中国・香港の投資会社、環球都市集団が主催、学校法人国際 大学が共催、共同実行委員長は長谷川閑史・経済同友会代表幹事)が都内で今月開かれ、経営者約60名が出席した。日中関係が冷え込む中、フォーラムは2011年以来3年ぶりに開催された。フォーラムの創設者である環球都市集団(WCH)の尹銘深(Charles Yin, チャールズ・イン)・董事長がフォーラムの意義と日中経営者同士の信頼の重 要性をあまさず語った。-日経BPアジアビジネスオンライン〈AsiaBiz〉尹銘深・環球都市集団董事長「日中の枠超えたアジア発グローバル企業を創出す る」第1回リポート(2014年06月26日)より引用・抜粋

チャールズ・イン(Charles Yin, 尹銘深)- CJCF/WLC創設者
尹銘深(Charles Yin)-CJCF/WLC創設者
経営者同士の交流が正常な日中関係を築く

 21世紀はアジアの世紀だと言われている。しかし、アジアの大国として、日本と中国の関係は憂慮 すべきものだ。今年1月の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で、世界経済の悪化を招くリス クとして、多くのグローバル大手企業経営者が日中関係の悪化を挙げた。日中両国の社会の雰囲気、 マスコミの雰囲気も決して良いものではない。

 このような状況の中で、日本、中国そして東南アジアから、約60名の企業経営者が一堂に会した。 国内経済が低成長でも安定成長を続けてきた日本の「百年企業」もあり、数十年間で売り上げ1兆円規 模まで成長してきた中国や東南アジアを代表する大企業もある。

 これらの企業がそれぞれ数万、数十万人の従業員を抱えている。経営者同士が対話を通じて相互理 解を深めることは、大きな意義がある。1社5万人だとすれば、70社で350万人もいる。経営者同士の 相互理解は、次第に350万人の従業員の相互理解に繋がり、さらに周辺のより多くの人に影響を与え る。これがやがて大きな力となり、政治的な対立がいかに厳しくても、必ず誤解を解消し、不正常な 関係を変えることができるだろう。

 30年余り、中国、日本、米国そしてアジア、様々なグローバル企業で働き、さらに自ら創業してい る中で、対話の重要性、人的交流の意義を強く意識してきた。このため、2009年に経営者同士が話し 合う場として、日中経営者フォーラム(CJCF)を創設し、今年で4回目を迎えた。


日中の企業が相違を認識し互いに学ぶべき

チャールズ・イン(Charles Yin, 尹銘深)- CJCF/WLC創設者
尹銘深(Charles Yin)-CJCF/WLC創設者

 CJCFの活動を続けるうちに、2011年、日中の経営者同士が互いに学び、グローバル企業をリードする人材を育成する「塾」が必要だと考え、次世代経営者向けのコミュニティ「ワールド・リーダーズ・センター(WLC)」を創設し、これまで計12回の活動をし、グローバルリーダーの輩出を手掛けてきた。
 日本の企業も中国の企業も、同じくアジアの企業である。しかし、過去300年の間、両国が異なった歴史の道を歩んできたし、文化も実はかなり違う。
 日本には創業100年以上の「長寿企業」が2万社以上もあると言われている。多くの中国企業、特に創業の歴史が浅い民営企業にとって、日本の「長寿 企業」の経営手法が良い手本になるはずだ。
 また、中国の企業にはスピードを重視するあまり、品質やプロセスを犠牲にする傾向が見られる。この点において、PDCA(計画・実行・評価・改善) サイクルを重視する日本企業に学ぶべきだ。国内市場にしろ国際市場におけるM&A(合併・買収)にしろ、中国の企業は長期的な視点に立って戦略を築 くべきだ。
 しかし、あえて言えば、スピーディーに動く中国企業の行動力も、日本の企業が学ぶべきだろう。中国企業の行動スピードは概ね日本企業の4倍ほど速 い。このスピードに慣れない日本企業の中には、誤解が生じ、機会を失ってしまった例が少なくない。
 日本の経営者にしろ中国の経営者にしろ、相手の国の企業に対する誤解を解消し、正確に理解する必要があるだろう。WLCの活動を通して、グローバル 市場でチャンスを予知し、マーケットをリードできる経営者が生まれることを願っている。

日中が協力してアジア発の世界に誇れるグローバル企業を創出

チャールズ・イン(Charles Yin, 尹銘深)- CJCF/WLC創設者
尹銘深(Charles Yin)-CJCF/WLC創設者

 日中の経営者は手を携え、アジア発のグローバル企業を創出するために努力すべきだろう。今はアジアの世紀だと言われているが、リーダーとなり得る 人材が足りない。20世紀は欧米主導の時代で、彼らがアジアの価値観や理念を理解して尊重するのは難しいだろう。21世紀に向けて、我々アジアの企業 家が自ら努力するしかない。
 日本と中国の間では、様々な個別の問題が生じても、大きな問題になる可能性は低いと考えている。中国にとって、発展するためには平和的な国際環境 が必要だ。また、両国の相互補完関係は強く、国の指導者が大局をコントロールする能力を持っていると思う。世界から称賛され、尊重されるためには、日中両国が課題を乗り越え、日本や中国という枠を超えて、アジアのためにより大きな責任を担うべきだ。自国の利益だけを重視する思考から脱却して、 アジア全体のために平和的、安定的な国際環境を作るべきだ。
  この目標に向け、日中両国の経済界のリーダーが率先して立ち上がって、努力すべきだ。日中経営者フォーラムは様々な困難を乗り越え、3年ぶりに再 開を実現した。経営者たちが率直に意見を交換し、相違を理解し、信頼関係を醸成することは、両国ないしアジア、世界全体の持続的な発展に資するもの だと確信している。

日本の企業にもっと自信を持ってほしい

 中国の企業にとって、日本の企業から学ぶべきところは多い。一方、日本の企業ももっと自信を持って海外に進出してほしい。日本の企業は技術力が高 く、良い製品を作っている。大手企業だけではなく、中小企業の中にも、長年にわたって技術を磨き、尊敬すべき企業が多い。しかし、国際市場において は、商社などに依存しすぎていて、自信が足りないように思う。国際的な視野を持ち、自ら積極的に海外市場を開拓すべきだと思う。日本のサッカーチー ムと同様に、アウェーでも自信を持って戦ってほしい。
 また、日本の企業が中国や米国の企業と付き合う際に、商売のみならず、相手の国の文化・社会・哲学なども幅広く学ぶべきだ。特に、ステークホルダーの戦略まで良く理解し、良い関係を構築することが重要だと考える。

尹銘深(Charles Yin, チャールズ・イン)環球都市集団(WCH)董事長、CJCF/WLC創設者

 中国政府機関に勤務後、国際大学にて国際経営学修士を取得。ニューヨークにて、 米・仏のグローバル企業のアジア事業の経営コンサルティング業務 を行い、各社に飛躍的な成長をもたらした。後に、日本大手企業にてアジア戦略および中国事業再編と販売体制の改革を成功させた。現在、中国・アジア を中心とした優良企業の投資と育成に邁進するとともに、多数の大手企業のアドバイザーを務めている。様々な公益活動を創設し、アジア発グローバルリーダーの創出と社会貢献に力を入れている。

チャールズ イン(Charles Yin, 尹銘深)環球都市集団董事長:「日中の枠超えたアジア発グローバル企業を創出する」