主な議題
グローバル化におけるこれからの企業経営
Managing China-Japan Business Partnership in the New Era
新浪剛史 株式会社ローソン 代表取締役社長

 今後グローバルな経営をやっていくうえで、いままでどおりの短期的なものの見方ではいけない。先ほど出てきたステイクホルダーの方たちの尊重と、しかしバランスをどう取っていくか。そのときに一番大切なのは、いかにコミュニティとともに生きていくか、共生していくか、そして社会の中でなくなてはならない存在になるかです。社会にとってなくてはならない存在になれば企業の価値は上がる。それがゆえに利益は上がり、それがゆえにリターンとして株主さんに戻ってくるという考え方です。そして社会に評価される。だから、社員がプライドを持っている。 一方で、経済合理性も大変重要です。そこで本業を一生懸命徹底し、社会に認められ、しかしやはり収益性をきちんと担保する。チャレンジ、イノベーション、中長期に数値的なROE、またはROICを上げていくことの両方が大変重要ではないか。両方できて、企業価値が持続的に向上していく。
 大切なのは、無限資源の資本主義から有限資源の資本主義に変わったことだと思います。無限、いくら電気を炊いてもいくらでもエネルギーはある。そういうところから、有限である、みんなでシェアしなければいけない、コミュニティとシェアしなければいけない。リーマンショック以降、より一層、そういうことが重要になってきているのではないかと思います。
 今後、グローバル経営をして行くうえで当たり前のことですが、どうも忘れてしまった欧米のファンド資本主義から、ぜひとも社会に認めていただく、企業が社会との共生を目指す、新しい、どちらかというとアジア的、徳を積んで社会とともにといった経営を目指していくべきではないかと思います。

 
浅野茂太郎 明治乳業株式会社 代表取締役社長

  日本の食品企業が国内ならびに海外の市場で競争力を維持し発展していくためには、お客様に明確な価値のある商品とサービスを提供し続けること、併せて食品の安全面で優位に立つこと、あるいはお客様の信頼に応えることが絶対条件であると考えています。
 また、別の面ですが、日本では食品の品質と安全について国際標準と比べても非常に厳しい要求があります。このことは企業に大きな負担を与えていますが、一方、今後は日本の食品企業の国際競争力に寄与するものと考えています。
 明治乳業は国内でのさらなる発展とともに、海外、特にアジアの人々に当社の商品を提供したいと考えています。そのためには、消費者と社会に対して価値を提供し続けることが肝要です。当社はそのために明治クオリアスという独特の品質保証システムを構築し、実現しています。
 明治乳業は赤ちゃんの粉ミルクの分野で一貫してトップシェアですが、量だけではなく母乳という理想の栄養の代用となる製品を提供する責任を強く意識しながら、この事業を行っています。当社は育児と赤ちゃんの発育のサポートにも力を入れています。一つの例として、30年以上前の1976年に始めた赤ちゃん相談室の活動があります。赤ちゃん相談室では、たとえば母親が自分の母親に相談するような内容も含めて育児に関するあらゆる相談を受け付けており、管理栄養士または栄養士の資格を持った相談員が一つひとつ対応しています。
 2006年、国際酪農連盟が主催した酪農乳業サミットが中国の上海で開催された際に、温家宝首相の夢を知りました。「私には一つの夢がある。中国人、まずは子どもたちに毎日、500mlの牛乳を飲ませるようにしたい」。このレベルは中国でも日本でも大変チャレンジングな目標ですが、ぜひともに頑張っていきたいと思います。