主な議題
新・時代における日中協業 ― 「教訓と展望」
Managing China-Japan Business Partnership in the New Era
鄭永剛 杉杉投資控股集団 董事長

  中国人経営者は日本の経営理念、それからブランド戦略を学ぶ必要があります。協力を通じて、この面においては、中国はこの32年の間に製造・加工ということで、廉価な労働力を使って非常に安いものをつくってきました。しかしこれからの時代は変わってきます。中国は人口が13億もいて消費市場が非常に大きいのですから、やはり競争力の強い商品が必要だということです。ですからブランド構築の面においては、やはり日本に学ぶ必要があるということです。
 中国の企業が日本の企業と協力するときに二つの問題があります。それは信頼と規範化という面で、やはり日本の企業にとって中国ははっきりわからないということがあるようです。中国の企業は誠意を持って信頼度を上げ、規範化する必要があります。また中国が心配しているのは、日本の企業は非常に保守的であるということです。協力する中で、これは非常に難しい問題になっております。
 中国の企業と日本の企業は、お互いにもっと深く知り合う必要があります。そして相互信頼という基礎の上に立って協力を進める必要があります。アジアの経済は日本と中国の企業が協力する空間、スペースというのが非常に大きいというところがあります。
 従来、中国はヨーロッパ、アメリカのものを学んできました。そして株式を上場し、さまざまなメカニズムをつくってきました。しかしアメリカのこのようなメカニズムは北方の遊牧民族のものです。日本の文化は、農耕民族の文化です。種を蒔き、育成し、そして秋になって収穫するという文化です。ですから私どもは日本と協力して、さまざまなものを学ぶことができたのです。

 
岩沙弘道 三井不動産株式会社 代表取締役社長

  日本経済の成長、社会、経済の変化に対応して、当社グループが不動産の新たな価値創造にいかに取り組んできたか。50~60年代は、日本が製造業を中心に輸出立国を志向する時期でした。このため利便性の高い工場用地を供給する埋立事業、そして成長企業の本社にふさわしいオフィスビルの提供を目指しました。 70年代は日本の高度成長期で、都市への人口流入と質の高い住宅へのニーズが急拡大した時期でした。これに応えるため、都心部での高層マンション、郊外部でのニュータウン開発を進めました。
  80年代に入りますと、製造業の海外進出が進む中、海外移転した工場跡地を緑や水にあふれた住宅エリアなどに再生させるとともに、郊外型ショッピングセンターや都心型リゾートなど新しいスタイルを提案し、新たな価値を創造いたしました。90年代は、バブル崩壊があり、その対策として大規模なリストラクチャリング、資産処分やコスト削減を余儀なくされました。そのため、不動産と金融の融合する新たなビジネスモデルの構築に取り組みました。
  これが結実したのが2000年以降で、いわゆるJ-REITに代表される不動産投資市場の創設、東京ミッドタウンや日本橋などの都市再生、地域再生の推進につながっています。続いて都市再生です。 こうした意義を持つ都市再生のプロジェクトを様々行っており、さにさまざまな面で環境に配慮したサステイナブルな街づくりを行っています。
  中国においても、ここまでお話しいたしました価値創造の精神の発揮は、日本国内のプロジェクトに取り組む場合と同じです。今後は成長著しい東アジア、その中でも特に中国に経営資源を重点的に投入したいと考えております。

 
吉岡浩 ソニー株式会社 執行役副社長

  これからどんどん成長する中国の中で、世帯年収、特に年間5000ドル~1万5000ドルぐらいの中間所得層が2015年までに全世帯の3分の1から3分の2へ急拡大していくということが一つの大きなポイントであろうと理解しています。ソニーはハードウェアからソフトウェアまで、たくさんのものを持っておりますが、最先端のエンターテイメント商品を中国のお客様にお届けして、生活をより楽しく豊かにしていただくことに貢献をさせていただきたいと考えております。また、中国におけるインサイダーとして活躍できるような体制をどんどんつくっていきたいと考えております。中国の皆様と強いパートナーシップを推進し、ゆくゆくは私どもと中国のパートナー様とで成功したモデルが世界中に展開できるようなことがあるといいかなと考えております。これからの話になるわけですが、いままでソニー、もしくは日本の大半の製造業が中国のパートナー様とお付き合いしてきたやり方と、これからとは相当変わってくると私自身は考えております。従来は世界の工場として位置づけられていた中国には、本当に大量に生産できる仕組みがありますから、基本的に私たちは生産を軸にお付き合いをさせていただいていたというのは事実です。ただこれからはむしろ中国を成長戦略の最重要点市場ということで位置づけることが必要になりますし、中国におけるR&Dを強化していくということが本当に必要になると思います。
 中国事業そのもの、それから世界に出ていくということを考えたときに、お互いに人材が非常に重要になっていくだろうと思います。いかに中国の人材を獲得してソニーと一緒にやっていけるかということと同時に、日本にいるソニーの人材が、いかに中国の方と一緒にやっていけるようにできるか。この二つの側面から、この大きな課題を解いて、将来に結びつけたいと思います。