主な議題
次世代CEOの育成
Developing Next Generation CEOs: Management Practices of the New Leaders
範敏 CTRIP携程旅行社 董事長兼総裁

 日中のGDPは同じレベルといえども、その中の組成がまったく違う。構造が違うことで、その経済規模の質といったものも違ってくるでしょう。よって中国が今後、世界の強い大きな国になるためには、いかに中国のサービス業を伸ばしていくかということは避けられないテーマだと思います。これについては、私たち多くの中国企業、そして中国の製造業も含めて、注目すべき問題だと思います。
  今後、中国は製造業とともに、サービス業でも台頭しなければいけません。しかも盲目的に単に資源を消費したり、あるいは価格競争をしたり、さらに言うならば環境を破壊するようなサービスであってはならないはずです。
  私どもは旅行業ですが、トヨタ自動車のリーンサービスマネジメントという思想はリーン生産よりも、もっとお客様を主体に考えた研究開発、技術のイノベーション、そして積極的なマネジメント、知的な管理といった、さまざまな近代的なマネジメントを通じたサービスのイノベーションだと思います。リーンサービスのオペレーションのマネジメントは総合的に考えるべきであり、単に個別に人的なリソースの低いレベルの重複とか、それを増やすだけでは決してないはずです。
  またサービスで重要なのは、きめ細かいサービスを実施することです。この点、日本は私どもにとって本当に見習うべき多くの経験をお持ちです。中国はまだ標準化されていないことが多々あります。同じ仕事をするにしても、サービス提供者によって同じやり方ではないということがあるわけです。
  本当に中国を世界一流の強い大きな国にするためには、これらの面で兄弟と言える国の人たちから学んでいかなければいけません。リーンサービスマネジメントを中国の製造業、サービス業に落とし込んで、中国の企業が世界に向かって羽ばたいていく基本としたいと思います。

 
橘・フクシマ・咲江 G&S Global Advisors Inc 代表取締役社長

 次世代グローバルCEOの要件は共通しています。グローバルに国境を越えて活躍できる資産としての人財は、起業家的人財、変革のための創造的問題解決能力を持つ人財、一言で言えば、国境や性別に関係なく、グローバルなプロフェッショナルなチェンジ・エージェント、変革者です。
 私は縦軸に専門のスキル、横軸にマネジメント力をとった場合に、専門性を高めてスペシャリストになるか、ジェネラリストとしてマネジメント力を高めるかという選択肢ではなく、そのどちらも兼ね備えているのがプロだと定義しています。専門的資質と個人的資質に分けられます。さらに専門的資質は経験と、それから培われた職務能力、そして個人的資質は生まれながら、あるいは大学卒業までに培われた基礎的能力と性格に分けて考えます。
 グローバルなCEOというのはどのような要件の人でしょうか。まず個人的資質では、戦略的能力、戦略的思考、それから語学を含めた異文化に対する対応能力、性格ではダイナミックでカリスマ性があり、かつインテグリティ、誠実であるということです。 経験では、自国以外の市場の経験、これは多様性の管理の経験、その中で培った職務能力である危機管理能力、コミュニケーション能力、創造的で柔軟な問題解決能力が挙げられます。CEOの要件として、日本のCEOの方々は高潔で品位があることを一番重要視しています。アメリカの同様の調査でも同じ結果が出ています。ダイバーシティ、多様性への対応能力が最重要の要件だと思っています。そしてそのための不可欠なマインドセットとして、言い古された言葉ではありますが、「Think global, act local」という柔軟性が必要だと考えています。

 
項兵 長江商学院 学長

  中国の製造業は今後大きな挑戦に直面します。価格競争から徐々に価値競争に移行していくということです。価格競争ですとイノベーションはそんなに必要ありません。イノベーションというのは、もし間違った選択をしてイノベーションをすると、コストがかかるためにリスクがあるわけです。しかし今後の価値競争ということを考えると、やはりイノベーションは大変重要になってきます。そのイノベーションは製品、プロセス、科学技術、そして市場組織形式にも及んできて、新たな思考回路が必要になります。
 アヘン戦争以降、現在まで中国は科学技術を重要視してきました。科学技術によって国を興すということをずっと主張してきました。しかしアメリカを見てみますと、GDPの82%はサービス業です。決してコアの技術があるものではありません。科学技術だけを大変重要視してしまっていたということがあります。もちろん科学技術は大変重要です。しかしそれを重要視し過ぎて、人を無視してきた。あるいは機関を無視してきたというところに欠陥があったと思います。
 中国の持つ要素は、日本の企業に一連のチャンスをもたらすということです。中国は大変大きな経済体です。人口増長による消費増長は、今後5~10年間見込まれます。それから中国には非主流産業、非主流市場の成功もあります。また、企業家の創業精神、起業精神も大変旺盛です。それは世界的にもなかなかないぐらいです。それから企業の柔軟性がかなりありますし、反応速度も速いといった強みもあります。
 もし日本の素晴らしいブランド、品質、R&Dの機能と中国の速い反応速度が結びつくことになれば、お互いのベネフィット効果は大変素晴らしいと思います。日本の人口は減っていき、高齢化社会が進んでいきます。これは中小企業にとっては大きな打撃だと思います。中日の中小企業の協力できるスペースはかなりあると思っています。