主な議題
中国市場での勝ち方 ― 第一線で闘う中国CEOから学ぶ
Winning in China: Drawing Lessons from the Frontline CEOs in China
金志国 青島ビール集団 董事長

 中国の経済が日本を抜いて世界第2位になるという状況の下で、1位、2位というのはそんなに重要なことではなくて、やはり質だと思っています。中国が第2位というところを見ても、1人あたりのGDPは、まだ日本の10分の1です。そのために手放しで喜ぶことはできません。このデータの後ろに何があるかということを、冷静に見る必要があると思います。
  日本の経済発展は私たちにどういうことを教えてくれるかというと、まず「日本の経営者はチャンスをとらえている。またイノベーション能力にも長けている」ということです。日本では1964年に東京オリンピックが開かれて、それが東京オリンピック景気をつくり出していますが、このチャンスをうまく使い、日本企業あるいは民族の風格を大いに発揮したと思っています。それによって日本経済と企業を、高度成長に押し上げたと言うことができます。これは世界的にも有名なことです。
  日本企業が中国にて失敗している例が多いとの話についてですが、やはり適応できないということがあると思います。文化の違いとか市場法則の違いがあります。中国の市場競争のルールは必ずしもWTOの正確な軌道に乗っているとは言えない状況です。「新たな高速道路ができても、まだどうしたらいいかわからない状態の人たちがたくさん走っている」という感じの市場です。経営者から見ても、そんな感じです。
  たとえば日本の企業家は、スピードを出してはいけないと言われればスピードを出しませんが、中国ではそうでもありません。中国の企業家は柔軟性がありますが、必ずしも規範を守るわけではない。日本の経営者は、規範はきちんと守るけれども柔軟性が足りないと思っています。

 
梁信軍 上海復星高科技集団 副董事長兼総裁

 私は今後10年中国は内需主導型のかたちに変わっていくだろうと見ています。中国政府も企業家もそう言っていますが、すぐに行動を起こす人は限られていると言えます。内需主導型になる理由としては人口構成の変化です。中国にはあるシークレットがあります。中国の人口の45%は1965年前後に生まれています。その人たちの子どもが消費をする年齢層に入ってきます。65年前後に生まれた人たちが親となり、その子どもたちが今後どんどん消費をしていくということがあります。 彼らはお金を借りてでも消費をします。親の世代はもちろん貯蓄のほうですが、若い人たちは親からお金を借りたり、祖父祖母からお金をもらって消費をするということも考えられます。もう一つは農村の人たちの所得も増えて、一人あたりの所得が増えます。また都市化が進んできます。こうしたことからこれから消費が伸びるでしょう。
  今後10年の中で経営者には三つのチャンスがあると思います。一つは長期的なチャンスです。消費の伸びと関係あるもの、そして資源と関係あるものです。二つ目は短期的なチャンスです。いま株式が割安なので、これがいいと思います。三つ目にインフレの可能性があると思います。
  中国で企業をやるには、最初に理解するまでは大変ですが、理解してしまえば楽です。相手方が何を要求しているかわかるからです。日本の企業が中国でいい条件を取ろうとするならば、自分の力だけではなくほかの企業の力も借りるべきだと思います。そしてそれを政府にきちんと説明できれば、中国で商売をやるのは簡単です。
  中国の多くの資源は政府が分配することになっています。ですから政府側で「あなたの計画は素晴らしい。ほかよりもいい」ということになれば、資源が得られるわけです。それは日本よりも簡単だと思います。

 
尹銘深 ワールドワイド・シティ・グループ 董事長兼総裁

  日本企業が中国で成功するためには主に三点を重視する必要があります。まず一つ目は中日両国の市場特質の違い、管理方法の違い、文化面での違い等様々な分野における違いについて認識し、理解することです。市場特質の違いを例に挙げると、日本市場の消費者は中産階級を主としています。もちろん近年は日本の中産階級の数が減ってきて企業も安価のものをつくっていますが、一方で、現在の中国は両極化が非常に激しく、昨年の調査によると、現在の中国の40%の財は1%の人口が握っていると言われています。現在の中国が必要とするのは両極化の「低価良質」もしくは「高価優質」の商品もしくはサービスとなります。しかしながら、激変する中国ではこれから5~10年間の間に、中国では1億から1億5000万の世代が中産階級になります。これは中産階級向けのものづくりに長けている日本企業にとって、チャンスと言えます。
  2点目に中国の国情、市場に合った戦略的な地図をつくらなければいけません。B2Bはどのようなものにしたらいいのか、B2Cはどのようなものにしたらいいのかを先入観を捨てて考えなければいけません。私は日本企業、中国企業、アメリカ・ヨーロッパ企業と多くの企業と仕事をしてきましたが、日本企業はモノづくりという分野に長けていますが、全体を見ることに長けていません。言うなれば、森を見るのに木しか見ていないという問題があります。中国には56の民族があり、四つの経済実態が混在しています。ですから常に全体を見なければいけませんし、全体を見た戦略をつくらなくてはなりません。
  3点目に決定プロセスをスピードアップする必要があります。それから現地化を加速し、ブランドを強化しなければなりません。中国で成功している外資系企業はブランドづくりに非常に力を入れて投資しています。